■2005年3月15日
たまには真面目なことを書こうかな...
GLAYのコンサートツアーでいろいろ考えたりしたことがありました。
今回のストリングスグループは5日間なるべく同じ人での拘束を
考えていたのがあって、若い人達でした。
いつもスタジオで仕事をしているときは私と同年代かそれより
上の人達が多い。
海外でもそうかな。
それはそれで音に落ち着きがあるしそれが私が目指すものと
近いということもある。
彼らには経験と実績もあるから仕事も早い。
昨今の制作費が削られている状態では、こういうところも
大事だったりするわけです。
いかに早くクオリティのいい録音をするか、もね。
10年以上まえだったらいいものが出来るまでスタジオにこもっている
事も出来ましたけれど、今ではそれを出来る人はミリオンセラーの
人達でしょうか。
でも私はそれがいいとは最近思っていません。
コンサートや録音は短距離競走に似ていて、その時の瞬発力が
ものをいうことが多いのです。
もちろんそれにはその人達のコンディションや意識が統一されること、
等々いろいろな要素が含まれますけれど...
ストリングスの一人としてはCDを聴いても自分の音は聞こえないし、
言葉はひどいけれどやはりその他大勢の中の一人に過ぎないのです。
でもストリングス一人一人の集中力がひとつになったときの音のチカラは、
大きいものです。
GLAYのコンサートでは18人いましたけれど、一体となったときは
バンドの爆音さえも負かすようなそんなチカラがあると考えています。
そしてそれは生の演奏でしか味わえないものであると。
ストリングスのパートにはいろいろな音符が書かれています。
白玉といわれる全音符、二分音符で構成されたいわゆるコードを
サポートしたり雰囲気を作るもの、リズムを刻むもの、メロディーに対しての
カウンター(裏メロともいうかな)等々。
一小節の中に音符がひとつしかなくてもその音符にどれだけ心を込めるか、
何を表現するべきかを考える事によって、音そのものが大きく変わります。
ダイナミクス、ヴィブラートのかけ方、弓の速度、弓の圧力、弓をダウンで
始めるかアップで始めるか、フレージング、フレージングによるスラーのかけ方。
こうやって言葉にするだけでもまだまだたくさん考えなければならないことがあります。
今回のストリングスチームの最年少は23歳と聞きました。
大学出たてですよね。
自分のその頃を考えればやはり同じ事なのですが、楽譜に書かれていることは
ちゃんと出来るのですが、それ以上のものを創り出そうとしない。
すごく平坦な音楽なのです。
たぶん、クラシックの勉強をしているときは作曲家の意図、そしてそこに
どうやったら自分の表現を出すことが出来るか、ということを毎日考えていた
はずなのですが、違うジャンルの音楽になると急に「弾く」だけになってしまう。
もちろん音楽が好きではない、とかアレンジが面白くない(私のですか?)など
いろいろな理由があるかと思うのですが、でもプロとして仕事を受けた以上は
全身全霊を使ってでも情熱を傾けるべきです。
(自分自身にも言い聞かせていますけれど)
ソロではなくてストリングスチームの一人というところで諦めずに、もっと
彼らのほうから私に向かって攻めてきて欲しかった、という気持ちもありました。
仕事を引き受けて、例えばそれが簡単な譜面だとしてもリハーサル時間が少なかった
としても、個人練習は必要なのです。
簡単な音楽なんてこの世には存在しません。
プロとして音を出した瞬間、それに責任を持たなければならないし、自分がまず
心を開いて尊敬を持って音と接しなければならない。
どんなに簡単な音でもその最後の、音が切れる瞬間が一番大事だったり、
フレーズが切り替わる一番最後の間が音楽を支配しているといっても
過言ではないのです。
そこまで自分のものにしなければ、プロとは言えません。
時間は少なかったですけれど、彼らにそういうところの一部でも知って
欲しかったと、今回の仕事でそう考えていました。
それは私が初めて指揮者という立場になったからかもしれません。
若い彼らは言えば出来るのです。
もちろん細かいところには手が回りませんけれど、でも打てば響く。
これは何だか若いっていいなぁ、と思う瞬間でもありました。
彼らにどうしてもないところは唯一「色気」でしょうか。
セクシーというものではなく、人生の色気です。
音の切れ際にある、魂が美しいもの触れたときのかすかなゆらめきのような。
こればっかりは歳を取らないとダメなのかな...
でも最終日にはいい演奏をしていました。
時間をかけて作り上げていった、という感じもあり私自身すごくいい仕事を
したなぁ、という気がしています。
それと自画自賛なのですが、GLAYのレコーディングではわからなかったのですが
自分のストリングアレンジ、よく考えられているなぁ、と。(笑)
すごく細かいところなのですけれど、やはり最後の一音とかそういうものも
気を抜かずに書けていると安心しました。
レコーディングは大抵すぐ終わって2度と弾かないですけれど、こうやって
何度も弾いていくうちにいいものは味が出ていいなぁ、とも。
南流石さんがホームページにも書いていましたけれど、自分の振り付けで
5万人のお客さんが一斉に踊っているということは嬉しいというより涙が出てくると。
私の仕事はそこまでわかりやすくありませんけれど、でもそのくらいやっぱり
楽しんでいたことも事実です。
(下の写真は酔っぱらってはいますが、二人で真面目な話していたんですよ)
この場をお借りしてGLAY、そしてコンサート関係者一同、スタッフ、そして
四家ストリングスチームに感謝します。
もちろん来て頂いた皆さんにも!!