楽器が調子良ければ何も心配はないのですが、そうでない人にとって楽器の調子は、
自分の演奏の半分以上が楽器のせいではないのか、と悩むほど重要課題となってきます。
実際私の楽器も調子良いときと悪いときの差が大きく、それは楽器の古さ、健康状態にも
よるのでしょうけれど、これほど変わるとついていくことが出来ないときもあります。
ほんの10分前まで完璧だったのに、ステージでは途端に何か鳴り方が違う、なーんてことは
しょっちゅうで、まぁ確かに自分の心をそのまま楽器が映し出しているのかもしれませんが、
それにしても!と思うことは良くあります。
少し板が薄いので楽器が鳴りすぎる傾向があります。
まぁ300年前ですから木が痩せていてしょうがないのですが、それでも2年ほど前に
大修理をして痩せすぎた部分はだいぶ厚みを増やしてもいます。
でも足りなかったのでしょうか….
弦の鳴りに対して楽器が受け止める力(重さみたいなもの)が足りないような、
そんな感じなのです。
調整、つまり魂柱と駒の位置関係、弦の種類、駒の種類、ペグ、テールピース、テールピース留め、
とありとあらゆることをしても、楽器の持つ神経質な気性はなかなか落ち着いてくれません。
今まで調整をしてくれていた人も、私の神経質さ(つまりは楽器もですか….(笑))に愛想を
尽かされてしまって見てもらうことが出来ませんから、しょうがなく自分で
なんとなくやっています。
とはいえ、駒を削って作ること等専門的な部分は職人さんにお任せしますが、日々の調整は
自分でしかできないのかなぁと諦めています。
駒をほんの0.1ミリ程度、つまり触ったか触らないかくらい動かしても、音がまったく
変わってしまって、日々格闘するわけです。
最近ではちょっとクセみたいなものもわかってきましたが、それでも難しいです。
まだ借りっぱなしになっているイタリアの新作は、本当に見事なくらい毎日の音が変わりません。
もちろん温度や室温の変化によっては多少変わりますが、根本が変わらない。
ぶれがないのです。
ところが私のアンジェラは、君は誰?と聞きたくなるくらい、変貌するのです。
でもこれをいくら楽器を調整する人に言っても、その人がチェロを弾けるわけではないし
まして毎日弾くわけでもないので、その変化具合を知ることが出来ません。
そしてもっと問題なのは、自分が弾いている状態で聴いている音と、チェロの正面で聴く音が
違うと言うこと。
弾き手にはチェロを弾く感触もあるわけで、今日は音が延びない、ウルフで音程が定まらない等々は
音を聴いている以上に演奏からの情報が多いので、一致しないのです。
私は一生、自分が弾くアンジェラの音が正面から聴くことが出来ないのですから….(笑)
楽器が私の心を映し出してくれている、とすれば、それはそれでとても素晴らしいこと。
でも、そればかりではなく、時には助けてくれるほどの優しさも、欲しい今日この頃なのです。
特に弦楽器はホールでの直接音はもちろんですが、半分以上は間接音、つまり壁とかに
反射されたいわゆる響きが大事。
大きなホールで響かせるためには、意外と楽器はギーギー鳴っているものです。
というわけで、最近エンドピンを変えました。
エンドピンを変えるとチェロはとても音が変わります。
ずーっと前から気にはなっていたのですが、大阪にエンドピンを作って販売を
しているところがあって、そこがとてもこだわりの製品を作っています。
本当は大阪まで行ってエンドピンを変えながら試奏して、これ!というのを
例に行かなくちゃいけないのですが、お願いしたところご厚意により
4本のエンドピンをお借りすることが出来ました。
私の使っているエンドピンは10ミリ径のチタン製。
軽くて柔らかいものです。
もうひとつはカーボン製で更に軽いのですが、私の楽器には不向き。
あくまでの私の感想ですが、新しい楽器にはエンドピンは質量の軽いもの、古い楽器には
重いものが良い気がしています。
送っていただいたのはいろいろな種類、鉄や真鍮、タングステン、チタン、
カーボンなどいろんな種類の金属のエンドピンです。
単純な1種類から3種類ほどを混ぜて(サンドイッチ状に)形成されたもの、本当に多種多様です。
それで全てチェロの音が変わります。
個人的には楽器が軽くなって移動が楽なので、カーボン製にしたいところです。(笑)
重いものと比べれば約1キロくらい変わるので、それは劇的に楽器の重さが変わります。
試奏の結果、私が選んだ商品はトリプル・ブリランテ(タングステン+チタン+真鍮)と
鉄入り真鍮(先端まで鉄)の2本。
やはり鉄の方が演奏に柔らかさを感じるので無理がないのですが、コンサート等では
音量とか音色ではブリランテというものの方が良かったです。
ご興味があるかたは、ホームページを見てみて下さい。
先日の鴻巣でのオーケストラと共演したコンサートでも、このエンドピンを使いました。
しかもウルフキラー無しで。
ホールも素晴らしかったのですが、久しぶりに自分が理想とする良い音がしました。
(と、自負しています)
でも材質のせいか、右手に余計な力を入れすぎてしまう傾向もあり、この辺が
これからの課題かなとも思っています。
300年前の楽器なのに、科学の進歩と共に使う材質はどんどん変化しています。
その昔は数百人の前での演奏会で良かったのに、今では2000人クラスのホールで
弾かなければならないために、弦はガット(羊の腸)からスチール製に、
魂柱やバスバーも変化しています。
私が使っている弦にはタングステンが使われています。
そしてエンドピンは…..
音を良くする旅は果てしないですね。